「ドッグフードをふやかして与えた方がいいのか」と迷う飼い主は多くいます。愛犬の食欲や健康状態によって、ドッグフードをふやかす方が効果的な場合があります。愛犬の状況に合わせた、柔軟な対応が重要です。
この記事では、ドッグフードをふやかすメリットとデメリット、適切なふやかし方について詳しく解説します。記事を読めば、愛犬に合ったふやかし方や与え方がわかり、健康的な食事管理に役立ちます。愛犬の年齢や体調に応じた最適な食事の提供方法を見つけましょう。
ドッグフードをふやかすメリット

ドッグフードをふやかすメリットは以下のとおりです。
- 消化吸収が良くなる
- 水分補給ができる
- 食いつきが良くなる
- 満腹感を得られる
消化吸収が良くなる
ドッグフードをふやかすと、消化器官への負担を軽減できます。通常、固形のドッグフードは胃の中で消化液と混ざり合い、時間をかけて分解されます。しかし、あらかじめふやかしておくと、胃酸の分泌量を抑えられ、スムーズな消化吸収が可能です。
胃腸が弱い場合は、固形のドッグフードの消化に多くのエネルギーを使います。ふやかすと、消化に必要なエネルギーを節約でき、吸収した栄養を体の成長や維持に効率的に活用できます。消化時間が短縮されると、胃もたれや食後の体調不良の予防にも効果的です。
水分補給ができる

ドッグフードをふやかして与えると、効果的な水分補給につながります。犬の体重の約60%は水分で構成されており、1日に必要な水分量は体重1kg当たり約50mlです。体重の5%の水分が失われると、生命に危険が及びます。体重5kgの小型犬なら1日250mlの水分が必要です。
ふやかしたドッグフードを与えると、食事と一緒に自然な形で水分を摂取できます。夏場や運動後は、体温調整や脱水予防のために十分な水分が必要です。
食いつきが良くなる
ドッグフードをふやかすと、食欲を刺激して食いつきを改善できます。ふやかす効果は以下のとおりです。
- ドッグフードの香りが強くなる
- 食感がやわらかくなる
- 味わいが濃くなる
- 口当たりが良くなる
- 食べやすくなる
犬は嗅覚が人間の約1万倍も鋭く、食欲は香りによって刺激されます。ぬるま湯でふやかすと、ドッグフードの香りが強くなり、食欲を促進します。やわらかい食感は犬本来の食性に近く、自然な形で食事が可能です。
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満腹感を得られる

ふやかしたドッグフードが水分を吸収すると1.5〜2倍に増えるため、同じ量でも少ないカロリーでお腹が満たされます。犬の胃の容量は体重の2〜3%程度です。5kgの小型犬なら約100〜150gしか入りません。
一度にたくさん食べられない犬や、ダイエットが必要な犬にはふやかしたフードが最適です。食事量が多めの犬や、ダイエットが必要な犬にとって、ふやかしたドッグフードは理想的な選択肢になります。満腹中枢が刺激されやすく、食事の満足度も高くなるからです。
ゆっくり食べるとかみ砕く回数が増え、消化吸収の効率も上がります。
ドッグフードをふやかすデメリット

ドッグフードをふやかす際のデメリットは以下のとおりです。
- 歯周病のリスクがある
- 手間と時間がかかる
- かむ力が低下する可能性がある
歯周病のリスクがある
3歳以上の犬の約80%が歯周病を患います。放置すると深刻な健康問題を引き起こすため注意が必要です。やわらかいドッグフードを与え続けると、歯磨き効果が得られにくく、歯垢や歯石が蓄積されます。歯周病は口腔内の細菌感染により、歯肉の炎症や歯を支える骨の破壊を引き起こします。
進行すると食欲不振や体重減少、内臓疾患の原因にもなりかねません。ふやかしたドッグフードを与える場合は、歯磨きやデンタルケア用品の使用など、定期的な口腔ケアが不可欠です。週に1〜2回は固形のドッグフードを与えるなど、歯の健康を考慮した食事管理も検討しましょう。
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手間と時間がかかる

ドッグフードをふやかす際に発生する手間と時間は以下のとおりです。
- ぬるま湯の温度調整をする
- ふやかす時間を待つ
- 適度な硬さまで確認する
- 食べやすい温度に冷ます
- 使用した器具を洗浄する
通常のドッグフードなら、計量して与えるだけで済みますが、ふやかす場合は15〜30分ほどの準備時間が必要です。作り置きができないため、毎食ごとに同じ作業の繰り返しとなります。衛生管理の面でも、使用した容器や器具の洗浄などが必要です。固形のドッグフードよりも食事に手間がかかります。
かむ力が低下する可能性がある
顎の筋肉は使わないと衰えやすく、固いものをかむ機会が減ると筋力が低下します。咀嚼は、歯の健康維持だけでなく、顎の発達や脳の活性化にも欠かせません。かむ力の低下は、食事の幅を狭める原因にもなります。固形のドッグフードや歯磨きガム、おやつなど、硬い食べ物が食べにくくなる可能性があります。
かむ力は犬にとって重要なコミュニケーション手段でもあり、遊びやストレス解消にも必要です。年齢や体調に応じて、固形のドッグフードとふやかしたドッグフードをバランスよく与えましょう。
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ドッグフードのふやかし方

ドッグフードのふやかし方は以下のとおりです。
- ぬるま湯でふやかす
- 電子レンジを使ってふやかす
- 冷蔵庫で寝かせてふやかす
ぬるま湯でふやかす
ぬるま湯でふやかす方法は、最も一般的で安全なふやかし方です。30〜40℃のぬるま湯を使用し、ドッグフードの1.5〜2倍の水量で10〜15分ほどふやかします。温度が高すぎると水溶性ビタミンが破壊され、低すぎると十分にふやけないので温度管理に注意してください。
ドッグフードの種類や粒の大きさによってふやかす時間は異なりますが、指で軽く押してつぶれる程度が目安です。子犬や老犬には15分以上ふやかし、やわらかい状態にします。ふやかす際は清潔な容器を使用し、定期的にかき混ぜれば均一な柔らかさに仕上がります。
愛犬の好みに合わせて水分量を調整し、食べやすい状態を見つけてください。
電子レンジを使ってふやかす

電子レンジを使ったふやかし方の手順は以下のとおりです。
- 清潔な耐熱容器に1食分を入れる
- 水道水を1.5〜2倍量加える
- ラップをして500Wで20秒加熱する
- 全体をかき混ぜて均一にする
- 人肌程度まで冷ます
電子レンジでの加熱は時短になりますが、温度管理が難しいため注意が必要です。加熱しすぎると栄養価が低下し、温度むらで一部が熱くなりすぎる可能性もあります。ラップをして5分ほど蒸らすと、より均一な柔らかさに仕上がります。温度は指先で確認し、熱すぎる場合は冷ましてから与えましょう。
冷蔵庫で寝かせてふやかす
冷蔵庫で寝かせてふやかす方法は、時間はかかりますが栄養価を損なわず、均一な柔らかさに仕上げられます。密閉容器にドッグフードと常温の水を入れ、8〜12時間ほど冷蔵保存します。水の量はドッグフードの1.5〜2倍程度が適量です。
冷蔵庫の温度は3〜5℃に設定すると、雑菌の繁殖を防ぎながらゆっくりとふやかせます。冷蔵庫でふやかす方法は、朝食用のドッグフードを前日の夜に準備したり、 夕食用を朝に仕込んだりする際に便利です。
冷たいまま与えると胃腸に負担をかける可能性があるため、食事の30分前には冷蔵庫から出して室温に戻しましょう。1回分ずつ小分けにして保存すると、必要な分だけ室温に戻せます。寝かせすぎると雑菌が繁殖するリスクがあるため、12時間以上の保存は避けてください。
ドッグフードをふやかしたほうがいい犬の特徴

ドッグフードをふやかしたほうがいい犬の特徴は以下のとおりです。
- 子犬
- 老犬
- 食欲不振の犬
- 歯や顎が弱い犬
子犬
子犬は消化器官が未発達なため、ドッグフードをふやかして与えましょう。生後3〜4か月までの子犬は、固形のドッグフードを十分に咀嚼できず、消化吸収も未熟な状態です。子犬は成犬の2倍以上のエネルギーを必要とし、1日に体重の5〜8%の食事量が必要になります。
固形のドッグフードからの切り替えは、7〜10日かけて段階的に行ってください。最初は水分量を多めにし、徐々に減らすと胃腸への負担を軽減できます。子犬は免疫システムが発達途中のため、清潔な環境での調理と適切な温度管理が欠かせません。
体重の増加や活動量に合わせて食事量を調整し、1日3〜4回に分けて与えましょう。
老犬

8歳以上のシニア期に伴い、以下のような身体機能の低下が見られます。
- 消化酵素の分泌量が減少し、栄養の吸収効率が低下する
- 歯の欠損や歯周病により、固形のドッグフードを十分に咀嚼できなくなる
- 喉の渇きを感じにくく、自発的な水分摂取が減少する
ふやかしたドッグフードを与えれば、消化器官への負担を軽減し、必要な栄養をスムーズに摂取できます。同時に水分が補給でき、腎臓や膀胱の健康維持にも効果的です。食事の回数を1日2〜3回に分け、少量ずつ与えると消化の負担を分散できます。
室温に近い温度で提供すると、食欲を刺激し、快適な食事時間を確保できます。
食欲不振の犬
食欲不振の犬にとって、ふやかしたドッグフードは効果的な対策です。体調不良や環境の変化、ストレスなどで食欲が低下した場合、固形のドッグフードでは十分な栄養摂取が難しくなります。ふやかしたドッグフードは香りが強いので、食欲の増進が可能です。
食欲不振が続く場合は、獣医師に相談し、原因を特定してください。原因に合わせて、ドッグフードのふやかし加減を調整し、少しずつ食事量を増やしましょう。1日の食事回数を増やし、少量ずつ与えれば胃への負担を軽減できます。食欲が戻ってきたら、徐々に通常の固形のドッグフードに移行しましょう。
歯や顎が弱い犬

歯や顎に問題を抱える犬には、ふやかしたドッグフードが適しています。小型犬や玩具犬は顎の力が弱く、固形のドッグフードの咀嚼が困難なためです。歯の欠損や歯周病、顎関節の問題を抱える犬も、固形のドッグフードをかみ砕く力が弱い場合があります。手術後の回復期にある犬も同様です。
咀嚼に問題がある場合、十分にやわらかくふやかし、必要に応じてペースト状にしましょう。食べやすさだけでなく、栄養バランスにも配慮が必要です。歯周病の犬では、口腔内の炎症により食欲が低下する場合もあるため、温度や固さを調整して食べやすい状態を見つけます。
ドッグフードをふやかす際の注意点

ドッグフードをふやかす際の注意点は以下のとおりです。
- 熱湯は使用しないようにする
- 余った水分も与える
- 作り置きはしないようにする
熱湯は使用しないようにする
ドッグフードをふやかす際に、50℃以上の熱湯の使用は避けましょう。熱湯は水溶性ビタミンを破壊し、タンパク質の変性を引き起こすためです。ビタミンB1は50℃以上で急速に分解され、その他の栄養素も高温によって失われます。熱湯を使用すると、ドッグフードの風味や食感も損なわれます。
熱いドッグフードを早く食べさせようとすると、犬の口腔内にやけどを負わせる危険性もあるので注意しましょう。適切な温度のぬるま湯(30〜40℃)を使用すれば、栄養価を保ちながら安全にふやかせます。子犬や高齢犬は温度に敏感なため、必ず人肌程度まで冷ましてから与えてください。
余った水分も与える

ドッグフードをふやかした際の余った水分は、重要な栄養素を含んでいるため廃棄せずに与えましょう。水溶性ビタミン(B群やビタミンC)は水に溶け出しやすい特徴があり、多くの栄養が含まれています。余った水分を与える理由は以下のとおりです。
- 水溶性ビタミンの補給ができる
- 効率的な水分補給になる
- 脱水予防につながる
- 栄養の無駄を防げる
- 消化を助ける働きがある
余った水分は、ドッグフードと一緒に器に入れて与えます。愛犬の体調や好みに応じて、水分量を調整してください。高齢犬や体調不良の犬は、自発的な水分摂取が減少するため、食事とともに水分を補給を行います。
作り置きはしないようにする
ふやかしたドッグフードは、作り置きを避け、都度新鮮な状態で与えましょう。水分を含んだドッグフードは常温で2時間以上放置すると、急速に雑菌が繁殖し始めます。腐敗や変質のリスクが高まり、食中毒の原因になる可能性もあります。気温の高い季節は、細菌の増殖速度が上がるため、より注意が必要です。
たとえ冷蔵保存していても、一度ふやかしたドッグフードは栄養価が低下しやすく、風味も劣化します。愛犬の健康を守るためにも、1回分ずつ適量をふやかし、20分以内に食べきれる量を提供しましょう。食べ残しがあった場合は、衛生面を考慮して廃棄してください。
時間に余裕がない場合は、前もって1食分ずつ小分けにしておくと、効率的に準備ができます。
まとめ

ドッグフードをふやかすと、消化吸収の改善や水分補給、食欲増進など、多くのメリットが得られます。子犬や老犬、体調不良の犬にとって、ふやかしたドッグフードは食べやすく、栄養を効率的に摂取できる食べ方です。一方で、歯周病のリスクやかむ力の低下など、デメリットにも注意が必要です。
30〜40℃のぬるま湯を使用し、清潔な環境で適切な時間をかけてふやかしましょう。熱湯の使用は栄養価を損なうため避け、作り置きも控えてください。愛犬の年齢や健康状態に合わせて、ふやかし加減や与え方を工夫すれば、より良い食事管理が実現できます。